「戦艦武蔵の最期~映像解析・知られざる“真実”~」が再々放送されるそうです。
-----放送日-----
2017年2月12日(日)14:00~14:50(前編) ※ニュース10分挟む※ 15:00~15:49(後編)
-----詳細-----
http://www4.nhk.or.jp/bs1sp/x/2017-01-21/11/31727/2894200/
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2017年2月12日(日)14:00~14:50(前編) ※ニュース10分挟む※ 15:00~15:49(後編)
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http://www4.nhk.or.jp/bs1sp/x/2017-01-21/11/31727/2894200/
この件に関し、取材の過程で多くのことを学びました。同時に多くの疑問が湧いてきました。 何回かに分けて、感じたこと、疑問に思ったこと、 更に数値計算をすすめるべきと思った課題、などについて書き留めます。 感じたことの中には、改めて戦争そのものに対する疑問や、 武蔵製造とその出撃に対する「なぜ」もありますが、 技術的なところから(技術的なことだけに終止するかもしれませんが)書いていきます。
【装甲は最適化されていたのだろうか?】
とてつもなく分厚い装甲だったようですが、 こんな分厚い鉄板を溶接する技術はなかったため、リベットで接続されていたそうです。 ここで疑問に思うのは、装甲の構造は最適化されていたのだろうか、という点です。 最適化というのは、与えられた制限条件のもと、最大性能を出す、ということです。
装甲について言えば、厚さや単位面積当たりの重量、製作上の制限などの制限条件のもとで、 どのような構造なら最大性能を発揮するか、実験なり解析なりで追求されたのでしょうか。 今と違って、コンピュータでの数値計算はできなかった時代ですから、 簡単な理論解析と、あとは実験に頼るしかないわけですし、 理論解析と言っても当時、固体の衝撃圧縮の理論やデータは日本にはなかったでしょうから、 主に実験に頼ることになるでしょう。 実際の厚さでの実験はかなり難しいでしょうが、 小さいスケールでいくつかの実験を行えばある程度はわかってくると思います。 そんなに難しいことではなさそうです。
装甲といえば、戦車の複合装甲に見られるように、 鉄板 1枚よりは何枚かに分けて、中間層をできれば空気ではなく、 軽くて硬い物質をはさんだ構造の装甲のほうが強いであろうことは、 当時は思いつかなかったのでしょうか。 あるいは、なんらかの検討の結果1枚板ということになったのでしょうか。
ここでいう性能は、爆弾が装甲表面で爆発した場合の防護能力や、 徹甲弾の貫通阻止能力になるかと思います。 ここで思い出すのは、ある先輩に聞いた話ですが、 当時の日本の爆弾の炸薬はピクリン酸やTNT、それに対して米軍の爆弾の炸薬はRDXベースだった、ということです。その先輩によると、 【日本の戦艦の装甲は、TNT爆弾に対する防護能力しか考えていなかったが、実際にはRDXベースの爆弾で、大丈夫だと思っていた厚さが、大丈夫ではなかった】 ということだそうです。魚雷に対しても同じだったのではないでしょうか。
TNTとRDXがどれほど爆発力が違うかというと、例えば Relative Effectiveness Factor、 これは、TNT 1 に対して、RDXは 1.60[1]、 爆轟圧力で言えば TNTのおよそ 20GPa に対して、RDXは 35GPa。もちろん実際の炸薬は RDX100% ではないのですが、それにしても性能がかなり違います。 これでは「穴があかないはずがあいた」となっても不思議ではありません。 この疑問は、数値計算で解明してみたいところです。 課題としては以下のようになるでしょうか。
課題1:総厚さ X mm の鉄板を、リベット接合技術だけで作る場合、どのような構造が最も性能が良いか。
1枚、2枚、4枚について数値計算する。
爆弾はTNT炸薬とRDXベースの炸薬2種類、実際に落とされた最大重量クラス、
徹甲弾については、総重量、爆薬量、速度などを調べねばならない。
魚雷に対しても検証してみたい。
リベット接合の強度が再現できるようなモデルが必要なので、簡単に計算してみる、 というわけにはいきませんが、いつかは計算してみたい課題です。 まずはリベット接合なしでやってみるんでしょうね。
[1] https://en.wikipedia.org/wiki/Relative_effectiveness_factor