分子動力学計算 60倍の高速化



1.  背景
C,H,N,Oを含む爆薬は爆発生成物として高温(1000-5000K) 高圧(1-50GPa)状態の
N2, H2O, CO2 を生成します。
文献[1]においては、そのような極限状態では、N2/H2O 混合物は、
爆轟波背後で相分離を起こすことが予測されています。
越・松為[2]は、分子動力学プログラム(NVT3)を用いて、たしかにそのような極限状態では相分離が起こることを検証しました。
NVT3 は越教授によて書かれたFORTRAN77 のプログラムで、
検証では、温度 T=2000K において、256個の分子(128H2O + 128N2) の計算が行われました。

2.  NVT3 プログラム
NVT3プログラムは二分子混合体の分子動力学計算を、NVT または NVE アンサンブルで計算します。
分子間ポテンシャルは改良Buckingham (exp-6)ポテンシャルを用い、分子位置は、leap-frog法で積分しています。
プログラムは、温度・圧力・エネルギーなどのほかに、相分離の度合を見るためにpair correlation function 値を出力します。

3.  NVT3 MD プログラムの高速化
我々は、越教授の FORTRAN77 プログラムをまず C に書き換え、ついでCUDA化しました。
また、シミュレーション結果を実時間で見るため、分子をレンダリングするルーチンを追加しました。
その結果、計算は、すべてをCPUで実行した場合と比べ、37~60倍の速度で計算することができました。

4.  結果
下の画像は、二分子混合体のほぼ最初の状態(step 10 t=10フェムト秒)と、
二相が分離した状態 (step 10400, t=10.4ピコ秒)を表しています。
この計算で、分子の数は N=13500、温度は T=2500K、密度は ρ= 2.3867g/cm3です。
計算は 20000タイムステップ、20ピコ秒まで行いました。
Intel Core i7 機、GPUは GeForce GTX480 で、総計算時間は 12分でした。

frame_1.gif
Figure 1: Near-initial state (10ps) of the H20/N2 system.  No phase separation can be observed.

md_simulation_movie.gif
Figure 2: Step 10400 (10.4 ps): Phase separation occurred: one can clearly see the clustering of the water molecules (blue) and the nitrogen molecules (white).

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5. その他
このプログラムは、二分子混合体を exp-6 ポテンシャルで計算するもので、数万の分子数を扱うことができます。
分子の種類を 3以上にしたり、また exp-6以外のポテンシャルを使用することもできます。

6. 参考文献
[1] F.H. Ree, “Supercritical fluid phase separations: Implications for detonation properties of condensed explosives”,
  J. Chem. Phys.,84, 5845 (1986)
[2] Koshi, M., Matsui, H., “Molecular Dynamics Study of High Temperature
  Phase-Separation in H2O/N2 mixture with exp-6 interactions”,
  Molecular Simulation, 1994, Vol. 12(3-6), pp. 227-239.


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